君と手を繋ぎたくて
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そして今、俺の隣には彼女―――陽菜乃が笑っている。
「…優志先輩、何笑っているんですか?」
「ん?…入学式のこと、思いだして」
陽菜乃の口の横についたお昼ご飯のコールパンのパンかすを取りながら、俺は笑った。
彼女は真っ赤にしながら、再びコールパンにかじりついた。
「懐かしいです。
あの時からあたし、先輩のこと好きだったんですよねー」
「…あの時の俺のどこが好きになったの?」
「どこですかね?」
「え?それ俺に聞く?」
俺も同じく、お昼ご飯のコールパンにかじりつく。
…相変わらず、美味しい。
「そういえば先輩、聞きたかったんですけど。
前に環奈と佐竹先輩がクレープ屋さんに行こうと誘って来たことありますよね。
その時言わなかったんですけど、先輩あの時クレープ屋さんの前行きましたよね」
「…あぁ、そういえば行ったな。
陽菜乃、見てたわけ?」
「あたしの家クレープ屋と同じ方向ですから。
先輩あの時、何でクレープ屋さんに行ったんですか?
用事あるって断っていたのに……」