君と手を繋ぎたくて
「あぁ…見に行ったんだよ。
陽菜乃と、いつか行きたいなって思って」
「でも先輩…今だから言えますけど、あの時凄い顔していましたよ。
睨んでいるって言うか…憎んでいるというか……」
睨んでる?憎んでる?
…俺、そんな顔していたんだ?
「多分、見えなかったからじゃないか?」
「見えない、ですか?」
「そう。
言わなかったっけ?
俺結構視力悪いんだよ」
「へっ!?」
「あの時言ってた用事って、コンタクト買いに行ったんだよ。
その日の朝、寝ぼけて弟が割ったみたいでさ。
俺裸眼で、見えなかったんだよ」
「視力の悪い先輩はたまたまその日は裸眼で、道路をはさんであったクレープ屋さんが遠くて見えなくて顔をしかめていたってことですか!?」
「そう。
確かに俺、見えないと怖い顔しているとは言われたことあるな。
…ごめん、詳しい理由話さなくて」
ペコンと頭を下げると、陽菜乃は慌て始めた。
「そんなっ、ごめんなさい今頃確認してしまって。
先輩が謝ることないですって」
「…ありがと。
陽菜乃って、優しくて可愛い良い子だよね」
陽菜乃の耳元に口を寄せ付けてヒソヒソ話でもするかのように言ってみると、陽菜乃の顔は真っ赤に染まった。
トマトみたいな陽菜乃も、可愛い…。