君と手を繋ぎたくて







…てか呑気に、先輩の笑顔に見とれている場合じゃなかった。

先輩はグイッとあたしの方へ顔を近づけた。





「……陽菜乃?
俺のこと、名前で呼んでって、何回言えばわかるのかな?」

「せ、先輩…その笑顔、怖いです……」

「先輩?
ん?俺は陽菜乃の先輩でしかないのかな?」

「ち、違いますっ!
先輩はあたしの、か、かかか、彼氏です!」





彼氏って単語だけで真っ赤になってしまうあたし。

漫画見ていた時は、

「何で彼氏ぐらいサラッと言えないわけ?」

とか思っていたけど。





言えない!

サラッとなんて言えるわけない!

かかか、とかカラスかよ、あたし。





自分で突っ込んでいるうちに。

あたしの唇は、再び塞がれた。





恥ずかしくて。

体温も上がって行く。





だけど、嬉しい気持ちの方が大きかった。






大好きな先輩と、

―――やっとこうして、巷にいるカップル同様のことが出来たんだから。









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