君と手を繋ぎたくて
佐竹先輩の隣に環奈が座る。
2人座っただけで、長椅子はいっぱいだ。
だから付き添いのあたしは、決まって環奈の前に座る。
「菓子パン。
環奈と陽菜乃ちゃん、どうぞ」
「ありがとーハル!」
「ありがとうございます」
佐竹先輩は環奈だけでなく、あたしにもハルって呼んでと言っているけど。
あたしはまだ、佐竹先輩をハルとは呼べない。
佐竹先輩をハルと呼んで良い後輩は、彼女である環奈だけの気がするから。
佐竹先輩から甘いチョコレート味の菓子パンを一切れ貰って食べていると。
隣にあの先輩が腰かけた。
あたしは菓子パンを齧ったまま、ロボットのようなぎこちない動きで横を見た。
「おー優志。
優志も菓子パン食べるか?」
「……俺は良い」
佐竹先輩の菓子パンを断ると、村木先輩は自分の持っていたパンを齧った。
真ん中にコールスローサラダのはいった、細長いパンだった。
「……村木先輩」
「ん?」
咀嚼しながら、村木先輩がこっちを振り向く。
座高は先輩の方が背が高いから高い。
だから隣に座るあたしを、見降ろす感じになる。
それだけでドキドキしてしまうあたしは、重症かもしれない。