君と手を繋ぎたくて
「そのパンって、駅の近くのコンビニのパンですか」
「……そうだけど。
知っているんだ?
確か、電車通学じゃないよね」
「はい」
先輩、以前あたしが電車通学じゃないって言ったこと知っているんだ。
ちなみにあたしも、先輩が電車通学のことを知っている。
「CMとかで宣伝していますもん。
確か、コールパンとか言うんですよね」
「そう。
コールスローサラダパンを略して、コールパン」
「略しすぎですよね」
思わず笑みがこぼれる。
すると先輩も、クスッと笑った。
少年のような無邪気な笑顔。
この笑顔も、あたしは大好きなんだ―――。
「それ、俺も思った。
コールって英語で電話するじゃん?
電話するパンかよってね、俺も突っ込んだ」
「アハハ、確かにそうですよねー!」
先輩と一緒に笑う。
そんなあたしたちを、環奈と佐竹先輩が穏やかな笑顔で見守っていてくれた。
暫くクスクス笑っていると、先輩がふと笑うのをやめた。
そして、少し心配そうな顔をしていた。