君と手を繋ぎたくて
そして放課後。
あたしは鞄に筆箱などを詰め、帰宅準備をしていた。
「環奈ー?帰ろー」
鞄を肩に掛けて振り向くと、環奈は満面の笑顔で鞄を肩に掛けた。
「ごめーん陽菜乃。
あたしこれから、放課後デートだから!」
「あ、なるほど」
家が近いためよく一緒に帰宅するあたしと環奈だけど。
環奈はこうして放課後にデートするから、一緒に帰れないことがたまにあるのだ。
もう慣れたことなので、あたしは手を振って教室を出ようとした。
「陽菜乃はしないの?
村木先輩との放課後デート」
「え?」
「帰り道逆なんでしょ?
少しでも一緒にいたいとか思わないの?」
「そ、そりゃ思うけど……」
今日付き合ったばかりでいきなりデートって言うのもなぁ。
一緒にいたいとは思うけど。
優志先輩の都合もあるだろうし。
「ほら、行こう!」
「行く」なんて一言も言っていないのに、環奈はあたしの手を引いて走り出した。
恋の力に敵わないことは経験済みだから、あたしは大人しく連行された。