君と手を繋ぎたくて
そして、今日何回も来ている4階の先輩たちのフロアに到着した。
まぁ帰宅するときはここ通るから、通り道ではあるけど。
お昼を食べたテーブルの所の椅子に座り、環奈と話しながら先輩たちのクラスが終わるまで待つ。
優志先輩、今日空いているかな。
付き合った初日にデートしても良いのかな?
もう少し日を空けた方が良い気もするけどなぁ。
「聞いてみる価値はあるよ!」って環奈はノリノリだし。
ちなみに環奈に聞いたところ、環奈と佐竹先輩は付き合ってその日にもうデートしてキスもしたらしい。
本当に早いよね……。
「環奈!」
教室の扉を勢いよく開けるなり環奈の名前を呼び、環奈に近寄り抱きしめた佐竹先輩。
それを「ハル!」と嬉しそうに呼びながら抱きしめ返す環奈。
…もう本当に、お熱いことで。
先輩のクラスメイトの人がチラチラ見て行く視線も気にしていない。
「アレ?陽菜乃ちゃん?
どうしたの?優志に用事?」
「あ、あの、いや、別にですね」
特に用事という用事はない。
デートも付き合って初日は早すぎると思ったから。
それだからいきなり佐竹先輩に聞かれて、あたしはしどろもどろに答えてしまった。
何て言えば良いんだろう?
用事がないわけでは…ないと思う。
そもそもあたし、環奈に連行されてここまで来たんだから。