君と手を繋ぎたくて
「優志呼んでこようか?」
「お願いハル!」
「じゃ、ちょっと待ってて!」
環奈の頭をなでて、教室へと戻って行く佐竹先輩。
よく見たら、鞄を持っていなかった。
鞄より早く、環奈に会いたかったのか…。
ていうか、そんなことより。
「何で環奈が連れてきてって言っちゃうのよ」
「だって連れてきてほしいんでしょ?」
「連れてきてもらえても、何言えば良いかわからないよ!」
「デート行きませんかって誘えば良いじゃない」
「先輩にだって用事とかあるかもしれないじゃん。
しかも付き合って初日にデートって早くない?」
「早くないよ。
世間的には、付き合って初日にデートにキスはお決まりだよ?」
「それは環奈と佐竹先輩だけでしょ!」
「そうだよ。
だって他のカップルがいつデートしてキスするかは、興味ないもの」
「あたしと優志先輩は、環奈と佐竹先輩みたいにラブラブじゃないの。
だから環奈たちには出来たことでも、あたしたちには出来ないかもしれないの。
世の中の恋人の基準を、環奈たちにしないで」
そりゃ環奈と佐竹先輩みたいにラブラブだったら、苦労しませんよ。
正直に言うと、佐竹先輩の明るさは優志先輩にはないから、羨ましい部分もある。
まぁ佐竹先輩より、あたしは優志先輩の方が大好きだけどね。
絶対に恥ずかしいから、本人には言わないけどっ!