君と手を繋ぎたくて
「しょうがねぇなー陽菜乃ちゃんは」
フゥッとわざとらしく溜息をついた佐竹先輩。
「優志。
オレと環奈、今からデート行くんだよ」
「知ってる。
朝から騒いで先生たちに怒られていたから」
「それでな優志。
優志と陽菜乃ちゃんも、デート行ってくるのはどうだ?」
「……え?」
優志先輩が、ピタッと行動を止めた。
そして、ゆっくりとあたしを見た。
「…………」
だけど優志先輩はそのまま、視線をあたしから外してしまった。
あたしの心はその瞬間、ズキンッと嫌な音をたてた気がした。
あたしと優志先輩の間に、何とも気まずい雰囲気が流れた。
「2人きりが恥ずかしいって言うなら、オレと環奈も一緒に行くぜ?」
あたしたちの間に流れる気まずい雰囲気を知らないのか、明るく言っていた。
「ちなみにオレと環奈は、近くに出来たクレープ屋に行くんだ!」
「割引券、丁度4枚あるんだ。
陽菜乃と優志先輩が使って良いよ」
クレープかぁ。
あたし結構、クレープ好きなんだよね。
外に設置されている椅子にカップルで座ってお喋りするのとか、憧れていたな。
優志先輩と並んでクレープを食べることが出来たら、楽しいだろうな……。