君と手を繋ぎたくて
「どうだ?優志、陽菜乃ちゃん」
佐竹先輩が満面の笑みで聞いてくる。
あたしは放課後特に用事もないし、行っても良いと思えた。
2人きりなら話す話題とかなかったかもしれないけど、環奈と佐竹先輩がいるなら心強いし。
あたしは自分より背の高い優志先輩を見上げた。
「優志先輩…どうですか?」
何だか、凄く緊張する。
前までは話す時緊張していたけど、こんなにはしていなかった。
これが…カレカノになった、あたしたちの変化なのかな…。
「あー…悪ぃ。
俺今日放課後、用事あるんだよ…」
優志先輩は眉を下げて、申し訳なさそうに謝った。
そして、そんな寂しそうな笑顔のまま、あたしを見た。
「ごめんねヒナちゃん。
また今度…行くってアリかな?」
「アリですよ!
そりゃ突然すぎましたもんね。
こちらこそごめんなさい、引き止めてしまって」
思ったより早口になってしまった。
だけど先輩は気にする素振りを見せないまま、あたしたちに「じゃあ」と踵を返して行ってしまった。
先輩とは校門出たら逆方向だから、ここでお別れ。
本当は追いかけていきたいけど。
何だか凄い寂しさを、あたしは感じていて。
先輩の隣で無理に笑ってしまいそうで、追いかけることは出来なかった。