君と手を繋ぎたくて
「陽菜乃って、先輩のどこが好きなの?」
「……ハァ」
あたしは思わず溜息をつく。
すると耳に環奈の声が響いた。
「何で溜息つくのよー!」
「わわっ、うるさいよ環奈!」
耳元で叫ぶなっ!
あたしの迷惑そうな顔を見た環奈は、「ごめん」と笑いながら謝ってきた。
謝っているようには見えないけど…まぁ良いか。
「環奈、その質問何度目よ」
「だって不思議なのよ。
何で先輩のことが好きなんだか」
「環奈には話したでしょ?
あたしが先輩を好きになったきっかけの話」
「そうだけど……。
それだけでよく先輩が好きだって言えるわよね。
私だったら先輩のこと、むしろ嫌いになるんだけど」
まぁ、普通はそうだろう。
あんなシチュエーション、普通の女子は望まないはずだ。
でも、紛れもなく、あたしはあのシチュエーションで先輩を好きになったんだ。
好きになっていなくちゃ、あたしは今ここで先輩を待っていない。
「環奈こそ、何で毎日毎日、あたしに付き合ってくれるの?
環奈は先輩に興味なかったんじゃないっけ?」
いちいち5階にある教室から階段を下りるなんて、よっぽどのことがないと出来ないだろう。
あたしは先輩を見るためなら、そんな階段なんて気にしないけどね。