君と手を繋ぎたくて







校門を出て行く先輩。

駅は左へ曲がって、10分ほど歩いた場所になる。

あたしも、電車通学が良かったな。

そうしたら、優志先輩と一緒に帰れたのに。




1人心の中で溜息をつき、落ち込んでいると。

―――優志先輩が、駅とは逆の右方向へ行くのを見た。




優志先輩?

何で右方向に?

駅から離れちゃうのに。

優志先輩、用事あるって言っていたはずなのに。



あたしは家が右方向だから。

先輩に気が付かれないように、曲がる。

まぁ気が付かれても、家がこっち方向だと言えば良いか。

嘘ついていない、本当のことなんだから。




静かな住宅街を、ゆっくりと歩く先輩。

あたしも歩くのは早い方じゃないから、良かったと思う。

早かったら、あっという間に先輩に追いついてしまうから。

近くなったからって電柱に隠れて進んでいたら、変な人だから。

変質者として、警察に通報されてしまうかもしれないから。

いつもより歩くスピードを落としながら、あたしは家へ続く道を、先輩に追いつかないように歩いた。




先輩、どこに行くんだろう?

こっちは住宅街が続くから、スーパーなどはない。

スーパーへ行くなら、駅方面へ向かうはずだ。



…本当に、謎だなぁ。






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