君と手を繋ぎたくて
暫く歩いていると、あたしが曲がる道が見えてきた。
あそこを曲がれば、あたしの家がある通りになる。
先輩は真っ直ぐ、そこを通り過ぎた。
あたしは、曲がるんだ。
……本来は。
だけどあたしは、その曲がるべき角を通り過ぎた。
先輩が振り向かないよう、心の中でお願いする。
曲がるべき角を通り過ぎたのだから、あたしはここからは立派なストーカーだ。
先輩はあたしの家が校門を出て右へ行くんだということしか知らないけど。
先輩のことは好きだけど、ストーカーにならないよう、あたしは一層歩くスピードを遅めた。
勿論、先輩を見失わないようにも気を付けた。
…こう考える時点で、あたしは立派なストーカーかもしれないな。
まぁ、そんなことは気にしないでいこう。
あたしの持つ好奇心が、戻って家へ帰ることを許してくれないのだから。
あたしは素直に、その好奇心に従うことにしたんだ。
静かな住宅街だ。
人なんて通らないし、車も通らない。
聞こえるのはあたしの足音と、小鳥が囀る音だけ。
道を歩くのも、あたしと先輩しかいない。
本当に先輩、どこへ行くんだろうか?
用事がこっちにあるのかもしれないけど…。
誰かの家へ行くのかな?
佐竹先輩の話だと、優志先輩は殆ど人と関わらない。
だから多分、友達の家ではないと思う。
浮気するようには見えないから、女の家ではないと思う。
てかそうであってほしい。
誰か親戚の家かな…?
何だかあたし、探偵みたいだな。
色々想像しちゃって。
自分で自分の行動、笑える。