君と手を繋ぎたくて
学校を出てから真っ直ぐ歩いていると。
静かな住宅街は過ぎ、少し賑やかな通りに出た。
ここに出ると、スーパーだのホームセンターだの、生活に必要なお店がある。
そこでようやく気が付いた。
先輩、ここに向かっていたんだ。
あたし近所だって言うのに、気が付かなかったよ。
まぁあんまりあたし、ここに来ないからね。
あたしがよく行くレンタルビデオ屋さんは、駅の方にあるから、駅へ向かうことが多いんだ。
こっちへはお母さんがよく行っているな。
しかし先輩はスーパーを通り過ぎた。
この辺は賑やかで人も多いけど、スーパーはここの1軒しかない。
だからここへ行くんだと思っていたんだけど。
どうやらあたしの予想は違ったみたいだ。
そもそも何で、先輩はこっちへ来たんだろう?
生活に必要な品や、学生が使うような文房具なども、確かにこっちに売っている。
だけど、駅の方がお店は多く、文房具も沢山揃っている。
何でわざわざ、先輩はお店の少ないこっちへ来たのだろうか?
こっちにしか売っていないものなんて、ないと思うんだけど。
すると先輩が、いきなり立ち止まった。
あたしも立ち止まり、周りから変な風に見られないよう、スマホを耳に当て電柱にもたれた。
これでテキトーに会話を始めれば、誰かと電話しているように人から見え、電柱に近くても怪しまれることはない。
その上賑やかで人通りも多いから、あたしの声が先輩に聞こえることもない。
あたしは「もしもしー?」と架空の人物に話しかけ、テキトーに話をした。
そしてそんなあたしの目線は、勿論立ち止まっている先輩へと注がれていた。