君と手を繋ぎたくて






学校を出てから真っ直ぐ歩いていると。

静かな住宅街は過ぎ、少し賑やかな通りに出た。

ここに出ると、スーパーだのホームセンターだの、生活に必要なお店がある。



そこでようやく気が付いた。

先輩、ここに向かっていたんだ。

あたし近所だって言うのに、気が付かなかったよ。

まぁあんまりあたし、ここに来ないからね。

あたしがよく行くレンタルビデオ屋さんは、駅の方にあるから、駅へ向かうことが多いんだ。

こっちへはお母さんがよく行っているな。




しかし先輩はスーパーを通り過ぎた。

この辺は賑やかで人も多いけど、スーパーはここの1軒しかない。

だからここへ行くんだと思っていたんだけど。

どうやらあたしの予想は違ったみたいだ。




そもそも何で、先輩はこっちへ来たんだろう?

生活に必要な品や、学生が使うような文房具なども、確かにこっちに売っている。

だけど、駅の方がお店は多く、文房具も沢山揃っている。

何でわざわざ、先輩はお店の少ないこっちへ来たのだろうか?

こっちにしか売っていないものなんて、ないと思うんだけど。




すると先輩が、いきなり立ち止まった。

あたしも立ち止まり、周りから変な風に見られないよう、スマホを耳に当て電柱にもたれた。

これでテキトーに会話を始めれば、誰かと電話しているように人から見え、電柱に近くても怪しまれることはない。

その上賑やかで人通りも多いから、あたしの声が先輩に聞こえることもない。

あたしは「もしもしー?」と架空の人物に話しかけ、テキトーに話をした。




そしてそんなあたしの目線は、勿論立ち止まっている先輩へと注がれていた。






< 42 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop