君と手を繋ぎたくて








その後チャイムが鳴り、あたしと環奈は佐竹先輩と別れて自分たちの教室へ戻った。

担任はまだ来ていなくて、あたしは後ろの環奈の方へ体を向けた。





「ねぇ、環奈……」

「どうしたの陽菜乃。
もしかして、村木先輩について?」




環奈、勘が鋭い。

あたしは頷いて、先輩をクレープ屋さんの辺りで見かけたことを言った。

途中担任が入ってきて話し始めたけど、あたしは無視して話した。

…誰かに話してしまわないと。

あたし1人では、抱えきれない気がしたから。





「村木先輩を……?
どうしてそんな所で見かけたの?」

「校門を出て行く先輩を見つけて…。
駅とは逆方向へ行くから、気になって追いかけてみたの」

「追いかけてみたって…。
ストーカーみたいな行為じゃない、陽菜乃」




苦笑いする環奈。

確かに、あたしのあの時の行動は許せるものではない。

だけど、あたしの足は言うことを聞かなかったんだ。




「……なるほど、ね。
実は私たち、その日クレープ屋さん行かなかったのよ。
逆に駅の方にアイスを食べに行ったのよ」

「そういえばあの時、環奈と佐竹先輩見なかったな。
あたしたちの方が先に校舎を出たから、まだ着いていないのかと思ってたんだ」




あの時、もし2人がクレープ屋さんへ立ち寄っていたら。

…優志先輩は、どうしていたのだろう?







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