君と手を繋ぎたくて
いつものように、担任はあたしたちが話しているのに気が付かないで、教室を出て行った。
もしかしたら、気がついているのかもしれない。
注意をしないだけなのかもしれないな…。
…今はそんなこと考えている暇は、ないんだけどね。
「村木先輩に聞いたの?」
「聞けない…。
ストーカー行為していたんだもの…」
「たまたまスーパーへ行く用事があったんですって言えば良いじゃない?」
「…何だか、聞いちゃいけない気がして……」
少しばかり、苦しい。
彼女なのに、素直に聞けない自分が。
嫌になってきてしまう。
大好きなのに…優志先輩のこと。
「…確かに聞きにくいわよねぇ。
どうして用事があるって断ったのに、クレープ屋さんにいたのって。
わざわざ嘘をついてまで行ったんでしょ?」
「嘘って……」
否定は出来ない。
だって誘った時、先輩は用事があると言ったんだ。
それなのに家とは正反対のクレープ屋さんの前で見かけたのだから。
…これを嘘だと、言えてしまう……。
「私やハルが聞いても良いんだけどね…。
私たちは先輩をクレープ屋さんで見かけていないんだもの。
見た本人である陽菜乃が言った方が良いわよね……」
確かに、優志先輩に聞けるのは、見たあたしだけ。
彼女なんだから、聞いても良いはずだ。