君と手を繋ぎたくて
「忘れたの?
わたしと一緒にバイトしないって誘ったじゃない」
「…そういえばそんなこともあったな」
「わたしのバイト先、凄く楽しいよ!
お客さんが沢山来ると忙しいけどね。
店長も他の店員さんも、明るくて面白いし!
お客さんも楽しい人ばかりだから、失敗なんて気にすることないし!」
「……」
「ユウシはかっこいいんだからさー。
すぐにお客さんたちのアイドルになれるよ!
お客さん、イケメン大好きな人多いから!!」
「…………」
「ユウシもやってみない?
受験はまだだし、ユウシ頭良いんだから。
駅に近いから、学校帰りに出来ると思うよ?」
そこまで華子に話されて、ようやく誘われたことを思い出した。
華子は入学当時から、駅に近い喫茶店でバイトをしている。
お客のラッシュ時は忙しいみたいだが、1日中忙しいわけでなく、昼間のみ忙しいらしい。
華子は友達が多く、片っ端から一緒にバイトしないか誘っているみたいだが、ことごとく断られているらしい。
そして、この間俺を誘って来たのだった。
「ユウシ、バイトしていないんでしょ?
一緒にしない?」
「……ごめん」
確かに俺はバイトしていないし、学校が終われば真っ直ぐ家へ帰る。
だけど、俺はバイトはしない。
「ユウシ、今日こそ理由聞かせてよ。
聞かせてくれないと、このノート返してあげないから!」
俺のノートを自分の方へ引き寄せる華子。
だけど、俺は慌てない。