君と手を繋ぎたくて







「別に返してくれなくても良い。
だけど数学の時間、先生に言うから。
それでノートに書かれている俺の名前を先生が見たら、華子は返す他ないからな」

「ユウシ、真面目すぎ!」

「2年の成績が重要なんだ。
良いから返せ」




「しょうがないなぁ」と何故か上から目線で、ノートを俺の方へ向ける華子。

俺は溜息をついて、ノートを受け取ろうと手を伸ばす。




「……ッ!」

「ユウシの手って冷たいよねー」




ノートを掴もうとした俺の手に触れ、体温を確かめる華子。

俺は反射的に、急いで自分の手を引き寄せていた。

はずみでノートが、バサッと音を立てて床に落ちた。

教室の中は賑やかだったので、クラスメイトは誰もノートが落ちたことを気にしていなかった。




「…どうしたのユウシ」

「…………」




俺はそのまま立ちあがり、ノートを机の中へ仕舞うと、足早に教室を出た。

教室を出たところで担任と会ったけど、「トイレならすぐに戻って来いよ」と言って見逃してくれた。

俺はトイレを通り過ぎ、誰もいなくなった廊下にある椅子に腰かけた。




ここはお昼の時、ヒナちゃんとお昼ご飯を食べる場所だ。

この間までハルと環奈ちゃんもいたけど、今日からはヒナちゃんと2人だ。






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