君と手を繋ぎたくて
「ともかく、わたしは心配したの。
それなのに、センセーってば、辞書30冊も持って行けとか言うのよ?
わたし、それ聞いて思ったんだけど」
「何をだ」
「わたしだけが悪いはず、ないわよね?」
「…何が言いたいんだお前は」
「ユウシ」
「何だ」
「わたしと一緒に、辞書30冊持って!」
パンッと両手を合わせてお願いする島田先輩。
それを「……は?」みたいな表情で見る優志先輩。
……この2人、凄く親しい………。
「何で俺が持って行かないといけないんだよ。
怒られたのは、華子だけだろ」
「わたしを心配させたユウシにも責任はあるわよね?」
「……俺まで巻きこむな。
話しかけたのはまだしも、ノートを借りたのは事実だろ」
「だってわたしが解くより、ユウシが解いた問題の方が、答え合っているんだもの。
正確な方を写したくなるものでしょ?」
「例え自分の答えが間違っていても、それを直して間違えた場所を見つけそれを克服すれば、自分の力になるだろ」
「ユウシ良いこと言うわねー」
「じゃあ辞書は自分で持って行け。
俺はヒナちゃんと一緒にお昼ご飯を食べるから」
島田先輩はあたしを見た。
「ヒナちゃん……?」
「は、初めまして。
山口陽菜乃といいます」
「ヒナノ…。
それで、ヒナちゃんね」
納得した様に島田先輩は頷いた。