君と手を繋ぎたくて
「おいおい陽菜乃ちゃん。
そんなに落ち込んだ顔するなよ。
もうすぐで優志(ゆうし)来るから」
環奈を左手で抱きしめたまま右手でスマホをいじる佐竹先輩。
村木先輩と最も仲の良い佐竹先輩は、勿論あたしが村木先輩が大好きなことを知っている。
何度も告白しなよ、と言われている。
1度もしたことないけど…。
「本当ですかッ!?」
「本当。
しかし陽菜乃ちゃんは、本当に優志が好きだなぁ。
オレが環奈を好きなぐらい好きなんじゃねーの?」
「ちょっとハル。
あたしは陽菜乃が村木先輩を思う以上に、ハルのこと大好きだからね!」
「わぁってるよ。
オレも環奈のこと、世界で1番愛しているよ」
朝からお熱いことで。
まだ梅雨も迎えていないけど、夏真っ盛りの熱さだよ。
もう夏以上って言っても良いかもしれないなぁ。
「…朝から元気だな、お前ら」
目の前で周りの目を気にせずイチャイチャし始めたバカップル。
その光景を手を団扇で仰ぐみたいにパタパタしていると。
「……ッ!」
目の前に、あたしの大好きな人が現れた。