君と手を繋ぎたくて
辛くない。
哀しくもない。
「そうなんだ」って納得感だけだ。
そうなんだ。
あたしと優志先輩、恋人に見えないのか。
……アハハ、そうなんだ。
ふっと何故か、笑みがこぼれた。
島田先輩が笑うあたしを見て、首を傾げた。
「どうしたの?ヒナノ」
「……アハハ…ハハ……」
あたしは乾いた笑いを漏らした。
何で笑っているのか、自分でもわからない。
だけど、笑みがこぼれてしょうがないんだ。
「恋人、に見えませんか。
…アハハ、確かにその通りですよね。
別に、良いんです。
恋人に、見えなくても。
だって、あたしの片想いだったんですもの。
入学した時から優志先輩のこと、好きだったんです。
だから告白して、付き合ってもらったんです。
そんなあたしたちです。
恋人になんて、見えませんよね…。
優志先輩と島田先輩の方が、美男美女でお似合いです。
あたしなんて、敵わないんです……!」
最後の方は、涙声だった。
泣いたり笑ったり、あたしは忙しい人だ。
あたしはそのまま、優志先輩や島田先輩の声が聞こえたけど、踵を返して走り出した。
あたし、何だか……醜い、や。