君と手を繋ぎたくて
「…食べてない……」
食べる余裕なんてなかった。
優志先輩と島田先輩が仲良くしている。
その姿を見ただけで、食欲は失せてしまった。
空腹よりも、胸を締め付ける苦しさの方が辛かった。
「どこかで食べる?」
環奈の心遣いに内心感謝しながらも、あたしは首を振った。
空腹感なんて感じないし、お昼食べる気になんてなれない。
「歩ける?」
「……うん…」
「じゃ、どこか人がいない所行こう?
ここじゃ人通り多いし、先生たちも通るから」
あたしたちが今しゃがみ込んでいる所は、自動販売機が近い場所。
自動販売機を使うのは生徒だけに限らないし、お昼は皆が使う場所だ。
確かにこんな所にいたら変な目で見られるし、先生とかに何か質問されてしまう。
聞かれて欲しくない話題だから、あたしは頷いて立ちあがった。
環奈があたしを隠すように歩く。
校庭は2人きりになれる場所などないので、校舎内へとやってきた。
暫く歩いていると、環奈が立ち止まって、その扉を開けた。
上を見上げ、どこの教室か確認すると。
そこは理科室だった。