君と手を繋ぎたくて
理科室は実験用具だけでなく、授業で使うらしいホルマリン漬けの蛙なども置かれている。
ここで食べる人や、蛙や実験用具などを盗む人などいないだろう。
そのため、鍵をかけていない場合も多いのだ。
空いている席に座る。
環奈も隣に座った。
「ちょっと待ってて陽菜乃。
私今から、ハルに電話するから」
「……ごめんね、環奈」
いちごみるくのみを持っていた環奈の様子を見ると、佐竹先輩を待たせて飲み物を買いに行ったんだ。
買い終えて戻る途中だったのに、こんな理科室に来させちゃって。
「気にしないで?
ハルには簡単に事情説明しておくから。
泣いている陽菜乃を放ってなんておけないよ」
ぱちんっと可愛くウインクをする環奈。
…本当、良い友達だ。
通話を終えたらしい環奈は、あたしの隣に改めて腰かけた。
そして、まだ泣き止むことの出来ないあたしの頭をなでた。
「何かあったの?村木先輩と」
「実はね―――……」
あたしは泣きながらも、環奈に説明した。
島田先輩のことも、島田先輩に恋人じゃないと言われたことも。
島田先輩と仲良さげに話す優志先輩の姿や様子を見ているうちに、辛くなったことも。
全部全部、吐き出した。