君と手を繋ぎたくて
「……そう。
まだ、アノ子を忘れていないから?」
「……よく、わかるじゃん」
「わたしは、ユウシと同じ中学でしょ」
「…そうでした」
そう。
わたしは、ユウシと同じ中学校だった。
多分クラスメイトの殆どは知らないけどね。
だってわたしは、中学3年生の6月に、他の中学に転校したから。
入学式を終え、クラスで出身中学がどこだって自己紹介したけど。
わたしは最後に卒業した中学名を言ったから、ユウシと同じ中学だったことは知られていない。
もっと言えば、わたしたちは幼馴染だ。
親同士が学生時代の友人で、幼い時からわたしとユウシは一緒に遊んでいた。
……アノ子も、含めて。
幼い時のユウシは、今みたいにかっこよくてモテていたけど。
何より人懐っこい笑顔が、誰からも愛されていた。
大人には人懐っこくて人見知りしなくて良い子だ、と褒められ。
周りの子には、優しくてかっこよくて時に可愛くて、人気だった。
…だけど。
今のユウシに、幼い頃の面影はない。
幼い時に仲の良かった子は他にもいたけど、今は連絡を取っていない。
もし幼い頃一緒に遊んだ子たちが今のユウシを見たら、どう思うかな?
きっと、驚くだろうな……。