君と手を繋ぎたくて








「……ッ!?」




目の前に不思議そうな顔であたしを見つめる先輩が視界いっぱいに入った。

手を伸ばせば届きそうな距離に先輩はいて、一気に心臓がうるさくなる。

心臓の音、先輩に聞かれていないかな…。





「……俺の顔、何かついてる?」




小さいのによく通る声が、耳に心地よく感じる。

まるでクラシックを聞いている気分だ。

…我ながら大げさな表現だけど、本当にそんなゆったりした気分になれるんだ。




「い、いえ何も!」

「……そう」




あんまりにも見とれていたから、先輩が自分の顔に何かついていると勘違いしてしまったらしい。

どもりながら答えると、先輩は再び眠そうに欠伸をしていた。

先輩、朝に弱いって佐竹先輩から前に聞いたな。

たまに午前の授業の時は寝ているときもあるとか。

机に突っ伏して寝ている先輩、見てみたいかも…?

…変態になるし、その前にあたしは後輩なのだから、不可能だけど。





「そういや優志。
お前この間、天使ちゃんに告白されていたよな?
あれ返事どうしたんだ?」




佐竹先輩が相変わらず環奈を後ろから抱きしめながら聞いた。

…あたしにとっては、凄くショックな話題を。







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