君と手を繋ぎたくて
あたしはゆっくりと、自分の体を起こす。
どこか痛みを感じるかドキドキしたけど、どこも痛みを感じなかった。
もしかして、優志先輩があたしが怪我するのを阻止してくれたのかな?
じゃ、優志先輩が怪我しているかもしれない?
もしかしたら、優志先輩いる?
あたしは急いでベッドを下り、カーテンを開けた。
「……あ、陽菜乃ちゃん」
軽傷者が手当てを受けるために座るように設置された長椅子に、佐竹先輩が座っていた。
意外な人物に、あたしはドキッとした。
…言っておくけど、恋に対してのドキッじゃないから。
「佐竹先輩…?
どうしてこんな所にいるんですか?」
「んー…サボり?」
「え!?」
「昼飯食べたら眠くなってさー。
保健室って、先生いないことで有名だから、サボるのに丁度良いんだよね」
ヘラッといつも通りに微笑む佐竹先輩。
真面目な環奈が見たら、怒るだろうな。
「あの、佐竹先輩。
優志先輩を知りませんか?」
聞いてみると、佐竹先輩は健康的な白い歯を見せて笑った。