君と手を繋ぎたくて
「優志なら、トイレだよ。
多分、もう少ししたら来るんじゃないかな」
「そうですか…」
「陽菜乃ちゃん」
「何ですか?」
急に真面目な顔になって、佐竹先輩は聞いてくる。
その表情の変わりように、あたしは驚いた。
「優志から聞いた。
階段から落ちたんだって?
どこか痛むところとか、ない?」
「あ、大丈夫ですよ」
「そう?
それなら良かった。
優志が陽菜乃ちゃんのこと心配していたからさ」
「優志先輩が、ですか?」
優しいな…優志先輩。
あたしの心が、ふんわりと温かい気持ちになった。
「…陽菜乃ちゃん。
聞きたいことがあるんだけど、良い?」
佐竹先輩が、急に声を潜めて話しだした。
まるで、あたし以外には聞かせたくないように。
「優志の過去って、聞いたこと…ある?」