君と手を繋ぎたくて
優志先輩は、自分から自分を寂しくしているんだ。
孤独にしているんだ。
室内から、外へ自分から向かってしまっているんだ。
「……陽菜乃ちゃん。
優志の過去、オレの口から聞きたいの?」
佐竹先輩が、真っ直ぐにあたしを見つめた。
逸らすことを許されない、真剣な瞳だった。
「……聞きたく、ないです。
優志先輩…本人から、聞きたいです…」
きっと優志先輩は、話すのが辛いはずだ。
だけど、あたしは優志先輩の口から聞きたいと思った。
辛い真実でも、優志先輩から聞きたいと思った。
そうしなくちゃ、あたしの意味がないから。
「……そういう性格だから、優志も笑えるんだろうな………」
「佐竹先輩、何か言いましたか?」
「ん、何でもない。
じゃオレは、授業に戻りますか。
オレの愛しい彼女も、今頃必死に授業を受けているだろうし」
環奈のことをアッサリと愛しい彼女だと言う佐竹先輩は、もういつもの佐竹先輩だった。
本当に佐竹先輩は、環奈を愛しているんだなぁ。
あたしに自然と、笑みがこぼれていた。