君と手を繋ぎたくて
第4章
赤い瞳
だけど。
そんなあたしの疑問も、簡単に消え去った。
あたしは、視力が良い。
軽く2、0はあるだろう。
だから、見つけてしまったんだ。
先輩の額にある、赤く滲んだ傷を。
「先輩、額どうしたんですか?」
「額……?」
「右の所です。
何だか赤くなっていますよ」
先輩は小さく首を傾げながら、自らの右手で右の方の額に触れた。
そして、一瞬だけ小さく顔を歪めた。
「先輩、もしかしてあたしを庇って……!?」
気を失っていたあたしは覚えていないけど、先輩が手を伸ばして握ってくれたことだけは覚えている。
その後どうなったか知らないけど、あのまま落ちていたのなら、先輩も恐らくあたしと一緒に階段の下に叩きつけられたはずだ。
大分(だいぶ)高い所から落ちたから、叩きつけられる強さは強かっただろう。
…本当は、小さな傷でもしていないと可笑しかったんだ。
それなのに、あたしは怪我をしていない。
一方あたしと一緒に落ちた先輩は、額に赤い傷を残している。
いくら先輩が前髪を下しているとはいえ、傷の位置はいつも見える。
普段傷がついていない所に、傷があるんだ。
―――あたしを庇って怪我をしたとしか、思えない。