君と手を繋ぎたくて
「先輩、座ってください!」
あたしは遠慮している先輩の腕を強引に掴み、先ほどまで佐竹先輩が座っていた長椅子に座らせた。
保健室なんて滅多に来ないけど、絆創膏ぐらいはあるだろう。
先輩が座るときに見たけど、出血は殆どしていない。
だけど血は滲んでいるから、きっともう止血したのだろう。
止血しているのなら、包帯がいるほどの大怪我ではない。
絆創膏で隠せる大きさだから、前髪で隠してしまえばさほど気づかないだろう。
あたしは棚の中から絆創膏が詰まっている箱を見つけ、1枚取り出し、先輩の額に貼った。
イケメンの顔に絆創膏は不似合だけど。
小さくても怪我は怪我だから。
仕方ないことだ。
「先輩。
絆創膏は一応貼っておきましたけど、怪我している場所は頭に近いので。
外見では問題ないですけど、もしかしたら頭の中がどこか怪我しているかもしれないので。
頭痛とかしたら、悪化する前に病院に行ってくださいね?」
放っておいて悪化して、そのまま…なんてことは、哀しいことだけどよくあることだ。
先輩には死んでほしくないから。
「……ありがとう」
「お礼を言うのはあたしの方です。
本当に、ありがとうございました。
先輩が守ってくれたお蔭で、あたしは無傷でした」
気が付けば、あたしの目から涙が流れていた。