君と手を繋ぎたくて
先輩はいつの間にか笑顔を消し、いつも通りの無表情だった。
「俺と華子はただの幼馴染。
ヒナちゃんが思っているような関係じゃないよ。
俺の母親と華子の母親が、学生時代の友達で。
今でも連絡を取り合うような仲なんだ。
家も近所で、父親同士も仲良いから、小さい頃から一緒に遊んでいたんだ。
学校も一緒なんだ、俺ら。
まぁ華子は父親の仕事の都合で、中3の6月ぐらいに引っ越して行ったけどな。
だからハルを含む他の奴らは、俺らが幼馴染だってこと知らないんだ」
そう、だったんだ…。
幼い時から知っている仲だから。
2人はあんなにも親しげだったんだ……。
「ちなみに俺は、華子のことを恋愛対象で見たことない。
あんながさつで抜けまくりの奴、俺は好きじゃない。
華子も俺のことを恋愛対象で見たことないだろうな。
だから、ヒナちゃんが怪しむような関係じゃない。
ただ幼馴染だから話すだけだ。
……勘違いさせて、ごめん」
ふい、と顔を上げた優志先輩。
あたしは驚きながらも、首を思い切り横に振った。
「あ、あたしこそごめんなさい!
1人で変な勘違いしてしまって…。
優志先輩、島田先輩と仲が良いから、カレカノなんじゃないかって疑ってしまったんです。
普段優志先輩は笑わないのに、島田先輩といるとき笑っていたから…。
あたし、勝手に勘違いしていたんですね。
ごめんなさい、ご迷惑をおかけして……」