私の居場所
3時の休憩で、社長は言った。

「ダメだ。福山に連絡が付かない。昼休みはずっと話し中だった。あっちの工場に電話をして福山と話すのも気が引けるしな。」

あっ…。

私が話していたから…。

私の表情を見て、悦子さんは笑いをこらえている。

「どちらにせよ、一度福山はここに戻ってくるんだろう?その時で良いじゃないか。顔を見て話した方は良い。」

雅さんが大福を食べながら、お茶を啜っている。

以前発注を一ケタ間違えた会社の人が、この近くに来る用事があるといって、寄ってくれたのだ。

この大福をお礼として置いて行った。

その会社の近くの行列の出来る和菓子店でわざわざ買ってきてくれたのだ。

どうもあのねじが間に合わなかったら、そこの組立機械を止めなくてはいけなかった上に、製品の納品も遅れて大変な事になっていたらしい。

「本当にあの時は助かりました。そしてまたよろしくお願いします。」

そう言って丁寧に頭を下げて帰って行ったのだ。

あの後、不定期だったあの発注は今は毎月になっていた。
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