私の居場所
「それなのに、園美はまた働きに出てしまって。本当にどれだけ心配を掛けたら気が済むのかしらってハラハラしてたわ。」

お母さんは何とも言えない顔をして微笑んだ。

少しひきつったような表情。

「でもな、福山君は違った。今思うと園美の強さを信じていたんだろうな。」

そういうとお父さんは立ち上がった。

「もっとゆっくり福山君と話をしなさい。今日はこれでおしまいだ。」

「お腹空いたわね。園美、手伝ってね。」

お母さんも立ち上がり、キッチンへ行く。

その後を付いて行こうとした私にお父さんは言った。

「福山君ほど、園美を分かってくれる男は他には居ないぞ。」

それを聞くと、私は颯太に会いたくて、会いたくて…。

涙が出そうになった。

でも私はその夜、颯太に連絡をしなかった。

顔を合わせて話さないとこの思いは伝わらない。

そう思ったから。

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