全部。
経験の少ない私は、彼のその行為に愛を感じていた。

行為こそが2人の愛を確かめ合う唯一の方法だとばかり信じ込んでいた。

仮にもしそうじゃないとしても、

体だけでもいいから、

彼が私を求めてくれるなら幸せだとも思った。

彼。彼。彼。

16歳の私は、彼でいっぱいだった。

私が全部を投げ捨ててまで愛した人。

大好きだった人。

彼の名は───────嶺央(りょう)。
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