乱華~羽をくれた君~Ⅲ【完】
横を向いた瞬間、軽くキスされた。
「ちょっ!ここ実家の前…」
「暗いから見えねぇよ」
そう言って助手席のシートを少し倒した。
「急になに…」
「なんかしたくなった。蒼空と唯が来たらできねーじゃん」
陸さんは再び私にキスをすると、そのまま何度も角度を変えて深くなっていった。
優しいキスは私の不安な心も溶かしていく。
まるで私が不安がっていたのを知っていたかのように。
長い睫が私の頬に触れるたびにくすぐったいけど、それがすごく心地よくて。
嫌な事もその時だけは忘れられる。
陸さんのキスは不思議な力を持っていた。