乱華~羽をくれた君~Ⅲ【完】
「夜に散歩するんですね」
私もしゃがんで犬の頭を撫でた。
「ああ、まーな」
「この時間、この辺通ることよくあるのに今まで会わなかったですね」
すると優斗パパが少し考え込んでから、口を開いた。
「嘘だよ」
「え?」
「夜に散歩なんかしねーし」
「あ…そうなん…」
なんでそんなウソついたんだろうと思った瞬間、
「あんたが俺んちの前通ったの見たからだよ」
と、私の目を見つめて言われた。
お互い犬を挟んでしゃがんでいたけど、その距離は結構近くて…
私は恥ずかしくなって咄嗟に下を向いた。
「幽霊みたいな女が足ひきづりながら歩いてっからさー。こんな時間に…マジでホラーだし」
そう言って、また普段のふざけた雰囲気に戻った。