Calender_Girl


僕が、話しかけようとすると


彼女は僕のそばに寄って「いままでありがとうございました。」と
丁寧にお辞儀をした。


僕は、内心迷いながら「あ、短い間だけど、お世話になりました。
...これからどうするの?」


彼女は、僕を見上げて「ソフトの仕事で東京に引っ越します。」

そういい、それから視線を逸らして

「......少しの間、こっちにいますけど。」と、そう告げた。


僕は、迷った。

新しい環境で楽しくやっていくなら、もうこのままの方がいいだろう。

次の言葉を迷いながら「田舎、帰らないの?」と言葉をつないだ。


「はい、帰りません。」と、きっぱりと、こんどは笑顔で彼女は答えた。


そうなんだ...と、僕は次の言葉を言うべきか、迷っていると


「それじゃ、お元気で頑張って下さい。」と
大きくお辞儀をして、そのまま俯いて出口のドアを開けて
すりガラスの向こうのエレベータ・ホールに彼女は出て行った。
階段で、6Fに降りるか細い靴音がStairway to Heavenのギターのように響いた。


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