Calender_Girl

父は病死、兄は事故死した。




今度は、母を僕が支えなくてはならなくなった。


だから、やっぱり自分の恋愛、などと言う訳には行かなかった。


折悪しく、勤めていた会社が不景気になり.....。
僕が辞めなければ、定年2年前の人の首を切る事になる、と
人事部にそう言われ、僕は希望退職をする事になる。


だから、やっぱり....。




鉄道員は無理でも、バス会社なら...と、運転免許を取り
バス会社に入社した。が....。


自動車事故で死んだ兄を思い出すのか、母が具合を悪くする。
止む無く、僕はバス会社を退職する....。



だから、やっぱり....。


人生なんてこんなものだろうと思う。


もう嫌だ、と思っても、居なくなる訳にも行かない。
唯一、安堵する場所が、作品世界の中だった。

そこなら、何にでもなれる。どんなことでもできる。


没頭していった。
音楽の示すイメージ、文学的虚構。
なんでも良かった。





怪我の功名か、物を書く事に少しづつ人から
評価が得られるようになってきたが....。


過ぎてしまった時間は、もう、戻っては来ない。




だから、彼女のような人が現れたとしても....。
自分の感情だけで、動く訳には行かなかった、んだ。




家で、レコードを聞いた。

カレン・カーペンターが
一番好きだった、と云う曲「I need to be in love」を
なぜか聞いた。



あの、中学校の時好きだった子が好きだ、と言っていた曲だ。



私は恋に落ちるべき、それは解っているけれど
時間を無駄にしすぎている、それも、解っている....。


切なげに、カレンは歌う。


カレン・カーペンターも愛に悩み、そして、死んだ。


僕はまだ生きているが....。死ぬわけにもいかない。
母はまだ、僕を必要としている。


恋に落ちるべき、と感情は求めている、ずっと前から。
でも...そうする訳には行かなかった。



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