Calender_Girl
...ふつう、嫌がるんじゃないかな....
僕の着ていた防寒着を着ていった彼女の事を
僕は思った。
ごく普通に、彼女は冷蔵庫から出てきて
何事もなかったように、その防寒着をロッカーに仕舞った。
.....潔癖だと思っていたけど。
夏の頃、すこし夜系の冗談に怒ったり
水着カレンダーを嫌ったりしてたのにな。
....ま、いいか。別に。
深く考えるのは苦手な僕だった(笑)。
工場を出て、細かい霧雨が降っている
高原の道を僕等はオフィースに向けて歩いた。
霧で、よくまわりが見えず、すこし幻想的でいい感じだ。
なんとなく、趣きのあるピアノのメロディが聞こえてくる。
それは、エロール・ガーナーの「ミスティ」のような感じの
ソロ・ピアノの音のようだった。
そういえば......よく、こんなことがあったっけ。
サラリーマン時代。
会社の夏祭りのイベントで、雨が降ってきて
たまたま一緒だった、総務課の美由紀ちゃんに
僕のジャンパーを奪われたっけ。「寒い」とか言われて。
あの子は背が高くて。ヒール履くと僕と同じくらいあったっけ。
もっと前....
バイトしてた喫茶店の休憩室が、冷房が壊れていて
酷く寒くて。
お昼を食べていた僕のトレーナーを、やっぱり「寒ーい。」
とか言って剥ぎ取っていったのは......
あ、そうだそうだ。あれは、由美ちゃんだ。
ひょうきんでよく笑う子だったっけ。