Calender_Girl
だが、志半ばにして.....
その頃からだったろうか、僕は、なんとなく動物に親しみを覚えるようになった。
科学者になりたかった兄ではなく、僕が科学研究に就く事になったのも
奇妙な事だ。
時々、僕は
自分の体を兄が使っているような気分になる事がある。
どちらかと言うと、自動車の運転が苦手だった僕に
突然、運転の勘、のような物が生まれたのもその一つ。
兄は、自動車の運転が得意で、レースでもかなりの成績を残していた。
僕は神秘主義者ではなく、どちらかというと現実的な方だ。
でも、これは偶然にしては少々不思議な事だと思う。
今生最期の日、兄は親不知が痛む、と言っていたらしい。
その日、何故か僕の親不知が突然痛みだし、僕は歯科医の友人に相談した。
だからその友人もよく憶えているのだが、そういう事は時々ある、と後日そう語った。
彼は、江戸時代には水戸藩御見医であったと言う古い家系である。
そして、そういう不思議な事例をいくつか語ってくれた。
そして、彼はこう言う。
「今、君がいるのは君の意志じゃない。継承を望む前世代の意志だ」
だから、そうしたものを大切に生きるべきだ、と。
.....まあ、言い得ている。確かに、どのように生きていっても自由だとなると
却って指針が得にくいものだ。
そして、周囲に流されて生きていくと大抵、ロクなことにはならない。
そういう友人たちが沢山居たので、特にそう思う。