偏食系男子のススメ【完】
誕生日のサプライズだとしてもそのセンスを疑いたくなるのに、今日は何も特別なことのないただの平日だから余計に意味が分からない。
「……早川、これはどういうつもりでやったのかか8字以内で説明しろ?」
「8字? 少なくない!?」
「あんたの声長い間聞いてたくないから」
ひでー藤島。と何がおかしいのかけたけた笑った早川は、くそまじめに指を折って言葉を探しているから、面倒になって「なんでもいいから早くして」とイライラをぶつけた。
結局無駄な会話になった。
それを聞いてふにゃりと笑った彼は、やった、なんて声を弾ませて話し始めるからちょっとウザい。
私と話すのが嬉しいみたいにされても、こっちはこれっぽちも楽しくないっつーの。やめろマジで。
「昨日藤島が家の用事でやむを得ず帰っちゃったあと、川端と計画立てたんだよ、藤島ときめかせ大作戦」
「家の用事とか一言も言ってないんですけど! あんたらが嫌で逃げ帰っただけだからな!?」
勝手に都合よく解釈すんな!
あとこんなんで私がときめくと本気で思ってるのだろうか。その思考にびっくりなんですけど。
「……作戦成功ですかあ?」
「は?」
背後から聞こえた得意げな声に振り向けば、いつの間にかそこに立っていた川端さんに驚いて、机に足をぶつけてしまった。ふざけんな痛い。
何勝手に人の教室に侵入してきてるんだこの女は……!
「驚いた藤島くそ可愛かった」
「わっ、分かるう! あーちんの揺れる瞳が綺麗すぎて連写しちゃったもん! さすがイズミール、あーちんの魅力を分かってます!」
……ナニこの人たち。
仲良さげにハイタッチを交わす早川と川端さんを見て唖然とする。
なんでそこで友情生まれてんだよ。最狂タッグじゃん。昨日はお互い警戒心抱き合ってたじゃん。
同時に、鼻息荒く一眼レフを掲げる川端さんに殺意が湧いた。