偏食系男子のススメ【完】
あらあら阿部くんったら。そんな怯えた目で私を見るんじゃないよ。
ちょっとタマネギ生でかじったくらいじゃ死にゃしないんだから。
「……川端に会えた? さっきあいつに会ったら魂抜けたような顔してたけど」
「……会いにきたらこの状況。人がまるで宇宙に放り出すしか仕方のないゴミ屑のようでしょ?」
「本家もそこまで詳しく言ってなかったと思うんだけど!?」
「……やっぱ出直そうかな」
はーっと溜息を吐いて、人だかりに背を向けた。
……なんか早川と話したら一気に緊張が抜けてしまった。
今ならすんなり、思ったことを川端さんに伝えられそうなんだけど、こんな忙しい中じゃ話もできない、きっと。
9時からのシフトならお昼頃には終わるだろうから、適当に時間を潰して待つ方が得策だろう。
どうせならちゃんと話したいし。
さっき早川が会ったというなら、一応登校はしているんだろうしね。
それを知れただけでもよかったことにする。
「待って藤島」
自分の教室に戻ろうと来た道を引き返すけれど、早川は何故かついてきた。