偏食系男子のススメ【完】
「……じゃ、そういうわけだから」
これ以上面倒事に関わりたくない。と思い、立ち去ろうと彼らに背を向ければ、不意に手首を引かれた。
川端さんの奴しつこいなあなんて思って顔を顰めて振り返れば、意外にも私の歩みを止めたのは翔くんの方で。
あら珍しい。
「……なに?」
「……これ、この前言ってたやつ」
「え?」
翔くんが差し出してきたのは白い封筒で、なんだなんだ、ラブレターか? 困っちゃうなあ。なんて冗談は置いとく。
中身を開ければ、この前彼との会話で上がった小説が原作の映画のチケットが一枚入っていた。
……ああ。そういえば話の流れで、一緒に映画行こうかってなった気がしないでもない。
ラッキー。チケットを取ってくれたってことは、映画奢ってくれるんだ。面倒だけど、これは行くしかない。
「日曜10時、映画館集合で」
「ほいほーい」
適当に返事をして、チケットを戻した封筒をぴらぴら振りながら今度こそ私は歩きだした。
川端さんが、きらりもいくぅううぅぅと騒いでいる声を耳に入れながら、勝手に逝けよって私が思っていたことを知る人はいない。