偏食系男子のススメ【完】
……なんで気付いてしまったんだろう。
優しくされることを知ってしまった。
「……余計なお世話だ」
「あれ、どこ行くの藤島、そっち教室じゃねーだろ」
「トイレ! まさか付いてくるとか言わないでよ!?」
怒鳴るように言って、逃げるように近くの女子トイレに駆け込んで個室の鍵をかけた。
出店のある教室から少し離れているせいか、静かでいい。
……もうずっとここにいようかな。うん、そうしよう。
そしたら早川はずっと女子トイレの前で待っているだろうか。
うわ、やだなそれ。キモイ。通報されればいいのに。
便座に腰かけて、太股に頬杖をつきながら眉を顰めた。
多分時刻は10時を過ぎたくらいかな。
……2時間もここでじっとして暇を潰すのは無理があるよなあ。
なんて考えていれば、ぱたぱたと駆けてきた足音が聞こえて、私の他にも誰かトイレに入ってきたみたいだった。