偏食系男子のススメ【完】




「――ねー、トイレの前に立ってた人、隣のクラスの男子だよね?」


「あー、なにしてたんだろう、マジキモかったんですけど」


「入ってくる寸前ぽかったよね、怖すぎ」


「顔は良かったけどなんかおかしかったよね」




……早速噂されてる。言わずもがな早川のことだろう。ざまーみろ。


ていうか入ってくる寸前ぽかったってなに!? あいつ何しようとしてたんだ……!



女子二人の会話を聞きながら、ぶるっと背筋が震えた。


……やっぱりさっきまでの私はどうかしてた。


早川がちょっと良い奴に思えたのなんて気のせいだ、女子トイレに忍び込もうとしてた男なんて誰が……っ!



個室に入ってくる気配はないから、二人は多分化粧直しかなんかのためにトイレに寄ったのだろう。


その場合入口付近の洗面台で鏡を見ているはずだから、一番奥の個室でじっとしている私の存在には、多分気付いていない。


さっさと出て行って先生でも警察でも呼んできてほしい。




「……あ、そうだ、名前、早川くんじゃなかった?」


「え、あの藤島に手玉に取られてる男!?」


「絶対そうだってー!」




……あれー? ……なんか始まっちゃった?


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