偏食系男子のススメ【完】




そして願い虚しく、

「あそこにいる人に聞いてみればいいと思うよ」

穏やかな声が耳に届いた瞬間、眩暈がした。




……何で言っちゃうかなあ。もう。


逃げ道がなくなった。最悪だ、最悪。クソ川め……!



……こんないちいちどきまぎして焦って狼狽えてる私ってすごいダサい。超カッコ悪いじゃん。こんなの私じゃないみたい。ホント最悪。




「あそこにいる人って……?」


「川端の友達」


「……ほえ?」




戸惑いがちに、だけど確実に近付いてきた足音は私の目の前で止まって、しゃがみ込んだ川端さんにばっちり見つかってしまった。


……怖くて顔が上げられない。



お互い何も言わないまま、しばらく動きを停止した後に、川端さんだけが立ち上がって、たたっとこの場を離れていく音がする。


私は動けないまま、軽くショックを受けている自分に驚いた。



……そんな風に明らかに避けられるとさすがにムカつく。


こうなると思って、だから、汚いマスクまで被ったというのに。



< 173 / 310 >

この作品をシェア

pagetop