偏食系男子のススメ【完】
……考えたってしょうがない。
頭の中で考えているだけじゃ、思っているだけじゃ、相手には本当の気持ちなんて伝わらないんだから。
前まではそれでもいいって、思っていたけど。今は、そうじゃない。
「――ごめんなさい」
覚悟を決めて、思い切り頭を下げた。
マスクを取ったことで、ずっとずっと軽くなった頭部にちょっとした違和感を覚える。
正面で川端さんが息を呑んだ気配がしたけれど、それ以外は何も分からなかった。
怖くなって顔を上げることもできないまま、続きの言葉を頭で組み立てようとするのに、上手く出来ない。
「……ごめん」
「……え」
「私の勝手で、今まで散々傷つけておいてごめん」
「……あ、いや、」
「悪いとは思ってるんだけど、やっぱり私、川端さんと友達になってみたいって思ってるのかもしれない」
その割にスラスラと喋ることは簡単で、……心臓の音が、物凄くうるさい。