偏食系男子のススメ【完】
指の先がひどく冷え切っているのが分かって、渇きっぱなしの唇を噛んだ。
川端さんは何も言わない。
……いや、覚悟はしてたけど。
これ以上私が何かを言うのは、多分、迷惑なのだ。
ゆっくり顔を上げて、今日初めて、直に川端さんと目を合わせた。
泣きそうな、辛そうな、怒っているような、どれとも判断がつかない変な顔をしている彼女から顔をそらしたくなるのをぐっと堪える。
「……あーちん」
「……」
「それ、きらりがずっと言いたかったことなんだよ?」
「……え?」
「きらりもあーちんと友達になりたいの……ふぇっ……ひっ……く」
――な、なんで泣くの……! 今。
ぼろぼろっと、遂に大粒の涙を零し始めた川端さんにちょっと焦る。
何か言葉をかけてあげるべきなのか、背中をさすってあげるべきなのかも分からずに、ただただ突っ立っていれば、不意に顔を上げた彼女に思いっきり抱きつかれた。
ていうかタックルかまされた。か弱い私が床に倒れ込まなかったのは最早奇跡と言えるであろう勢いで。
ぎゅーっと背中に回された細い腕に抱かれて、なんだか恥ずかしい。
恥ずかしい、恥ずかしいけど。できる限り、……応えてあげたい。
ぎこちない手つきでその薄っぺらな背中を数回叩いてみれば、川端さんは「うーっ」と濁った嗚咽を吐き出したから、ふっと思わず笑ってしまった。なんだか安心して。