偏食系男子のススメ【完】
隣の席の変食家 10
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別に深い意味はない。
「……なんか今日の藤島、いつもの百倍増しで可愛い……」
「キモイからじろじろ見ないで」
「髪縛ってるの超グッとくる」
「別にあんたのために縛ってきたわけじゃない」
ただ暑いからだ。それだけだ。
――8月初めの日、左耳の下でくくった自分の黒髪を手ぐしで梳かしながら、どこか落ち着かない気持ちで早川を睨みつけた。
待ち合わせた遊園地の最寄り駅で見つけた今日の早川こそ、いつもとちょっと違って見える。
学校以外の場所で二人で会うのは初めてだからかもしれない。
この前の映画は、川端さんや翔くんがいたし。
私服のセンスが良くて、周りの人がこっちをちらちら見てるのを感じる。早川はスタイルもいいから。
連れて歩くには申し分ない容姿。もし変な着ぐるみとかで登場されたら即殺してやろうと思ってた。
本人は気付いていないのか単に慣れているのか、周囲の視線は特に気にしてないみたいだけど。
むしろ気にしろって感じだけど。
帰りたい、嗚呼帰りたい、帰りたい。一句出来た。