偏食系男子のススメ【完】




けど、隣でいちいち悲鳴を上げる川端さんが面白くて、これはこれでありだなとも思った。



しばらくしたら目が虚ろになって、口が開きっぱなしのまま黙ったから、私は笑いをこらえるのに苦労する。どうしてくれるんだ川端さんの奴。


映画館を出たら、しっかり謝ってもらおう。まったく映画館で変顔なんかどういう教育受けてるんだ。


スマホを出すのはマナー違反だから、写メを撮れないのが残念。それをネタに一生強請れそうなほどには酷い顔してるのに。


と彼女を観察しているだけで約1時間半の映画が終わり、私は割と大満足。



途中、肘かけに置いていた手を早川に握られそうになり、腕をつねってやるのが面倒だったくらいで、出かけるのもたまには悪くないな、なんて思う。










「――もうやだ……」




ぐったりした様子の川端さんは、テーブルに突っ伏して声を絞り出した。



私は映画が終わったらすぐ帰ろうとしたんだけど、無理に帰れば地の果てまでも追いかけてきそうな約2名に止められて、少しだけの約束で映画館近くのカフェに入り今に至る。早く帰りたい。


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